6月10日(金)
9日未明、中国海軍のフリゲート艦が尖閣諸島周辺の接続水域に侵入しました。国家海洋局の巡視船はこれまで何度もありましたが、海軍艦艇の侵入は初めてのことです。軍の行動は、一つ間違えば直ちに一触即発の事態にエスカレートする可能性を孕んでいます。2014年11月、安倍総理は習近平主席と首脳会談を行い、防衛当局間のホットライン設置など「海上連絡メカニズム」の早期運用開始で合意したはずですが、あれから1年半以上も経つのにまだできていないとは! 緊張感が足りないと言わざるを得ません。
中国側の意図について、メディアでは日米が南シナ海における中国の海洋進出を非難していることに対する牽制だという見方が報じられていますが、どうも説得力を感じません。あの中国が伊勢志摩サミットの首脳宣言やアジア安保会議でのスピーチなどに、それほど敏感に反応するものでしょうか? 私は人民解放軍が暴走している可能性の方が高い、それだけに事態は深刻なのではないかと見ています。少なくとも、そういう最悪の可能性に備えるべきです。
中国は南シナ海ほぼ全域の領有権を主張し、環礁上に人口島を造設し、軍用機が利用可能な滑走路を建設するなど、猛スピードで既成事実化を進めています。中国の拡張主義が軍主導で、外交部が外されていることもよく知られています。もし同じことを尖閣諸島にも仕掛けてきているのだとしたら、海軍艦艇の侵入はこれからも続くでしょう。その場合、人民解放軍に「計算間違い」をさせないよう日本側が毅然とした対応をとるべきことは当然です。
同時に、偶発的な軍事衝突を防ぐため、自衛隊と人民解放軍との間の迅速な意思疎通も死活的に重要になってきます。自衛隊幹部が海上警備行動に言及したことが報道されていましたが、国の安全保障は威勢のいい言辞だけでは確保できません。一日も早く「海上連絡メカニズム」を構築していただきたいと思います。