12月10日(木)
日本社会は急速な少子高齢化、人口減少に直面しています。消費税の増税は、確実に足りなくなる社会保障財源を確保するために、苦しい決断ではあったけれども民主党野田政権の時に自民党・公明党と合意して決めたものです。増税が選挙に不利になることはわかっていましたが、我々は、子どもたちの未来を真剣に考え、国民の皆様に広くご負担をお願いするほかないと決断したのです。
ところが、自民・公明両党は、消費税を10%に上げる当初から、加工食品を含めた広範な軽減税率を実施することで合意しました。その穴埋めのために必要な財源は1兆円とも言われています。これでは元の木阿弥、何のための増税なのでしょうか。谷垣幹事長は「ない袖は振れない」と当初発言されていましたが、その通りであり、財源はいったいどこから捻出されるのか、社会保障の充実に回らないのなら約束違反です。
所得分配の方途として軽減税率に問題があることは、多くの経済学者が指摘しています。食料品は生活必需品なので、誰もが購入します。支出に占める食料品の「比率」は高所得者の方が低所得者よりも小さいのですが、食料品の「金額」は高所得者の方が大きい。つまり、軽減税率の恩恵をより大きく受けるのは高所得者であって、高所得者の負担軽減は低所得者以上に大きいのです。こんな基礎的なことは、与党議員も当然分かっているでしょう。なぜ安倍政権は自民党税調を押さえつけて、公明党に譲歩したのでしょうか。来年の参議院選挙を睨んだバラマキであることは、見え見えだと思います。
現場の大混乱も不可避です。軽減税率の対象となる加工食品を仕分けして周知する作業や、事業者のシステム改修作業が再来年4月までに間に合うのでしょうか。そもそも、私の地元の食料品店の中には「システム」などというものを持っていない小さなお店も少なくありません。何が対象となって何がならないのか、お店の人がレジを打つ度に大混乱することでしょう。消費者にとっても、なぜこの商品は8%で、あの商品は10%になるのか、という疑問が湧きます。8%に据え置きしてもらいたい業者や業界の政治家へのロビー活動が始まるかもしれません。自民党と公明党の合意だけで、決めていいはずはなく、国会での議論、国民への説明が必要です。複雑な軽減税率を、参議院選挙目当てで拙速に実施することに私は反対です。