12月17日、民主党が「国家安全保障戦略」及び「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」、 「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」について談話を発表

2013年12月17日

「国家安全保障戦略」及び「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」、 「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」について(談話)

民主党安全保障総合調査会 会長  北 澤 俊 美

本日、政府は「国家安全保障戦略」、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」を閣議決定した。    平成22年12月に民主党政権下で制定した「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」は、それまでの「基盤的防衛力構想」を一新して「動的防衛力構想」を打ち出し、南西方面の防御に対する資源配分強化、島しょ部防衛の強化を明確に位置づけると共に、限られた予算の下での人員構成バランス等の構造問題にも取り組んだ。また、日米同盟の深化をグローバルな安全保障の変化の中に再定義し、国家安全保障会議の設置を提言する等、冷戦の残滓を拭い去り、時代に適合した防衛大綱への脱皮を実現した。その根幹は今日の厳しい安全保障環境にも十分対応していると評価できる。  今回の防衛大綱は、「歴史的な文書になる」という安倍総理の空虚な言葉にもかかわらず、基本的に「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」の延長線上にある。同盟国である米国も高く評価し、内外にも定着していた「動的防衛力構想」と今回打ち出された「統合機動防衛力」の中身に大差はない。統合的運用についても、従来からその強化に向けて着実な取組みが行われ、東日本大震災の際にも効果が確認されたところであり、目新しさはない。にもかかわらず、政局優先の与党の打算から無理やり基本概念の名称変更に踏み切ったことは、我が国に対する国際的な信頼を失わせかねず、理解に苦しむ。  安倍総理の威勢のよいスローガンばかりが先行したわりには、国民各層や連立与党からも反発を招き、中身の薄いものとなっていることも今回の文書の特徴である。「積極的平和主義」も、その定義が依然不明確であり、安倍総理の復古的戦前回帰志向と相まって国際社会に誤ったメッセージを与えかねない。また、日中間で緊張が高まる現下の情勢の下、不測の事態を発生させないためにも、ホットラインや海上連絡メカニズムの創設など、包括的な対策を講じるべきことをより具体的に強調すべきであった。  大綱の基本理念からは「節度ある防衛力の整備」の言葉が消え、限定的な資源の有効活用や自衛隊の人員構成適正化等の観点が後退するなど、持続可能でバランスの取れた防衛力整備への配慮も窺われない。陸上総隊の創設についても、方面総監部制を残す限り、屋上屋を重ねるものとなることが強く懸念される。  国家安全保障戦略については、長期的視点からの総合的戦略であることを謳う一方で、食糧安全保障が明確に位置づけられていないなど、全体の整合性が十分にとれていない。また、短期的な政策も少なからず含まれており、我が国の中長期的な安全保障戦略と呼ぶには心もとない。  従来、文書策定にあたっては、有識者懇談会報告書の発表後、関係省庁間で慎重に議論する等、プロセスの透明性と政策の整合性および国民の理解確保に細心の注意が払われてきた。しかし、今回はこれらの丁寧なプロセスや国会での議論はほとんど行われないまま、国家の存立の基本とも言える大綱等の重要文書が政略的に制定されることになった。誠に残念である。

民主党としては、今後の政府・与党の動きを注視しつつ、本日決定された安全保障関連文書の詳細について慎重に検討・精査を行う所存である。 以上

 

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