5月11日(水)
1994年11月、ちょうど私が地方議員として政治を志した頃、アメリカの郵便公社が、原爆のキノコ雲の下に「1945年8月、原子爆弾が戦争終結を早めた。」という文言を入れた切手の発行を計画し、大騒ぎになったことがありました。結局、日本側の抗議を受けて米側がデザインを変更することで決着したようですが、広島、長崎への原爆投下について、アメリカではそんな残酷な見方が一般的なのかとショックを受けたのを覚えています。
あれから20年以上の時を経て、オバマ大統領が現職の米大統領として初めて広島を訪問することになりました。11月に大統領選を控えた政治的に難しい時期であるにもかかわらず、広島を訪問し、犠牲者を追悼する決断をしたオバマ大統領に対し、心から敬意を表したいと思います。原爆投下について大統領に謝罪を求めないのかという声もありますが、厳しい決断をしたオバマ大統領にそこまで求めるのは酷なのでしょう。ただ、できれば長崎も訪れて貰いたい。そして何よりも、被爆者から直接お話を聞く機会を是非設けていただきたい。
「原子爆弾投下後の惨状は、よく数字の尽すところではない。人は垂れた皮膚を襤褸として屍の間を彷徨、号泣し、焦熱地獄の形容を超越して人類史上における従来の想像を絶した惨鼻な様相を呈したのであつた。」
これは、原爆投下に関する唯一の確定判決、いわゆる下田判決の一節です。いかにデータをもって示そうとも、核兵器の惨禍はそれを経験した人にしか分かり得ないのです。日米の首脳が共に人類史上最悪の悲劇の経験に耳を傾ける姿は、和解の象徴として歴史に記憶されることでしょう。大統領に同行する安倍総理、よろしくお願いします。