8月25日(木)
イギリスのテリザ・メイ首相は、日本ではファッションセンスのことが先行して報道されましたが、いやいやどうして、老獪な政治家でしょう。自らはEU残留派だったのに、離脱派のリーダーで政敵だったボリス・ジョンソンを外務大臣に据えて世間をアッと言わせ、新設のEU離脱担当大臣と国際経済担当大臣にも離脱派を任命し、3人を競わせています。
首相就任後すぐにスコットランドを訪問して独立派を牽制したかと思えば、年内には正式なEU脱退通告は行なわず、交渉準備に専念するといち早く表明するなど、とても地に足のついた人だという印象です。ダウニング10と呼ばれる首相官邸の側を歩いてみましたが、物々しい警備があるから気がつきますが、そうでなかったら素通りしてしまうほど小さなものでした。
国会討論では、野党議員のヤジをものともせず、激しく反論し、相手をねじ伏せる勝ち気さ。単に女性議員、女性首相ということで注目される以上の胆力、タフな一面が垣間見えます。
また、日本では任期四年を全うすることなく、総理が衆議院を解散し、総選挙を実施します。もっともらしい大義名分を掲げているものの、その実、国民のためでなく自らの政権基盤の延命のために解散権を乱用しているのではないかと思えてなりません。私自身、だいたい任期半ばの二年か三年で解散、総選挙を経験してきました。
イギリスは、2011年の議会会期固定法という与野党が合意して、議会会期を原則5年で固定し、首相の解散権を制約する法律を成立させました。本来こうあるべきではないかしら?我が国も見習うべきだと思います。
そうそう、私たち日本の政治家は夜の会合、夜の宴席は当たり前で、自宅でゆっくり家族一緒の夕食がとれるのは数えるほどしかありません。イギリスでは昼の時間めいいっぱいワークして、夜は早めに帰宅し、家族と一緒に過ごす習慣だそうです。大切な家族との時間を削り、過酷な残業や上司、同僚との仕事飯に付き合い疲れ果てて帰路に着く日本人の働き方を、考えさせられました。
わずかな期間でしたが、イギリスの歴史と伝統の重みを感じる旅でした。ほかにも、予想以上に美味しかったイギリス料理のこと、街を闊歩するイスラム女性のファッションのこと、バスや鉄道を最大限活用している交通インフラのこと、興味深い話題は尽きないのですが、今回はこの辺で終わりにしたいと思います。