11月30日(水)
衆議院文部科学委員会で質疑を行いました。
今回の委員会は、日本の大学で理工系を専攻する学生の割合がOECD平均より低い上に増加傾向にもないという現状に対して、デジタル・グリーン等への成長分野への大学・高専の学部再編を促すための法改正が議題であり、令和4年度第2次補正予算に必要な事業予算が計上されています。
今回の第2次補正予算で多く見られる、事業を新たに行うにあたって、新規に基金を造成して、その基金に多額の予算を積み上げるという予算計上の問題を指摘しました。
今回の法案による事業は、令和5年度予算に向けて100億円で準備していたにもかかわらず、いきなり3,002億円にまで膨らませて令和4年2次補正に計上しました。
毎年度の予算に計上して、国会審議にかけるのではなく、数年分の予算額を一度に基金に積み上げる方式では、国会のチェックが行き届かず、野放図な運用につながる懸念があり、非常に問題です。
しかも、実際に事業を開始するのは令和5年度になってからであり、令和4年度中には事業費として使用されません。
今回の経済対策は、まさに今、物価高に苦しんでいる家計や企業を助けるため、経済を押し上げるため、喫緊に策定されたものであるはずなのに、令和4年度中に経済効果が表れない事業が、今回の補正予算に計上されていることは不適当です。
さらに、今回の事業で本当に、大学・高専に理系の学生が増えるのかについても懸念があります。
国公立に比べて特に私立大学に理系の学生が少ないため、私大の学部転換を促したい狙いのようですが、私立大学の学費は、文系学部が約80万円、理系学部が約110万円と約30万円も理系学部のほうが高い状況があります。
永岡大臣はしっかり対応したいとおっしゃいましたが、どのような手段でどの程度まで対応するのか、明確な答弁はありませんでした。
また、高校1年生の10月から12月という、早いタイミングで、自分の将来を決める文系・理系を決めなくてはならず、その後、文系から理系へ、また理系から文系への移行がほとんどできない日本の教育課程も、理系を選択する学生が増えない要因となっているとも考えられます。
文系・理系の類型にとらわれない教育を行う拠点校の整備などに取り組んでいるとの大臣のお答えでしたが、普通の高校、一般的な学生にはほとんど縁のないものでしかありません。
さらに、理系を選考する女子学生が男子学生に比べて圧倒的に少ないことも大きな課題です。
高校1年生で、理数系に比較的高い能力を示している女子が約4割いるにもかかわらず、高校では16%の女子しか理系のコースを選択せず、学士を取得する女子学生は5%、修士にいたっては1%しかいません。
ただ、女子大で初めて工学部を開設した奈良女子大や、女子枠を設けている芝浦工大などの取り組みも近年見られるようになっています。
率直に言って、今回の法改正による事業だけで大学・高専において理系を専攻する学生が十分に増加するとは考えられません。
しかし、先述した大学独自の取り組みに対する支援や、文理選択について教育課程の見直しなど、他の環境整備もあわせて進めていくことで、大学・高専における教育が学生にとってより有益なものとなり、さらには我が国の成長産業の発展につながるよう、今回の事業の進捗をチェックしつつ、必要な後押しも行っていきたいと思います。