7月8日(水)
コンコルドと新国立競技場
総工費が2520億円に膨らんだ新国立競技場。新聞の全国世論調査で、計画を「見直すべきだ」と答えた人が8割に達しました。多くの国民、専門家の反対にもかかわらず、安倍政権は建設に突き進もうとしています。
「コンコルドの誤謬」という言葉があります。将来的に利益を生まないことが分かっているのに、それまでの投資が無駄になることを恐れて投資を止められない状態のことです。かつてフランスと英国が共同開発し、商業的失敗に終わった超音速旅客機コンコルド。実は計画の途中段階から、そうなることは分かっていたそうです。しかし、過去への拘りから投資を続けた結果、赤字を拡大させ、最後には墜落事故まで起こしてしまいました。
新国立競技場の建設問題は「コンコルドの誤謬」に陥っているように思います。莫大に膨れ上がった建設工事費のほか、後から設置することになる屋根の工期期間中はイベント等が実施できなくなるので、当然にして興行収入は当初計画より減ることになります。他方、JSCの説明によれば、年間の修繕費だけで10億円以上が見込まれており、本当に採算がとれるのか疑問です。
これだけ様々な問題、課題が山積しているのに、オリンピック・パラリンピック招致活動の時に宣伝してしまったとか、今さら止めたら違約金を払わなくてはいけないとか、誰かが責任をとらなくてはいけなくなるとか、枝葉末節な理由によって冷静な判断ができなくなっているように見えます。
2020年東京オリンピック・パラリンピックは、我が国にとって世紀のビッグ・イベントであることは言うまでもありません。メイン会場となる新国立競技場が国民から祝福されるものとならなければ、画竜点睛を欠きます。関係者には、一度立ち止まる勇気を持って頂きたいと思います。